給湯器エラー111 マンションでの点検チェックと連絡先早見表
マンションで「給湯器 エラー 111」が表示されたときに、居住者が安全にできる初期確認から、管理会社やメーカーへの連絡先判断までを整理しました。点火系の不具合や給排気まわりの影響など代表的な原因を押さえつつ、再発防止に向けた見直しポイントもまとめています。
- エラー111の基本的な意味と発生条件が分かる
- 居住者が安全に行える初期チェック手順が分かる
- 管理会社やメーカーへ連絡する適切なタイミングが分かる
- 修理と交換の判断材料と概算費用感が分かる
給湯器エラー111がマンションで出たとき
- エラー111の意味と起こる条件
- まず確認するチェックリスト
- ガスメーター遮断の復帰手順
- リモコンのリセット方法
- 吸排気口・フィルターの確認
- 強風・台風・凍結時の対処
- コンロは点くがお湯が出ない原因
- 追い焚きだけ111が出る理由
- PS設置機の換気と点検ポイント
エラー111の意味と起こる条件
ガス給湯器に表示される「エラー111」は、多くの国内メーカー機で点火不良(失火)を示す代表的なコードとされています。これは、着火シーケンスのいずれかの段階で必要条件が満たされず、燃焼が安定確認できなかった際に自己診断が作動した状態です。一般的な着火手順は、制御基板が運転指令を受け、燃焼用ファンで所定の送風を行い、ガス電磁弁を開いて点火プラグから火花(高電圧スパーク)を飛ばし、炎検出棒(フレームロッド)で燃焼を検知する、という流れになります。111が出るときは、①火花が弱い/電極が汚れている、②ガスが不足または圧力が安定しない、③給排気が乱れて炎が立ち上がらない、④水量・水圧が不足して着火判定に至らない、などが複合的に関与することが少なくありません。特にマンションでは、パイプシャフト(PS)内やバルコニー設置など設置環境が限定されやすく、強風や逆風(ダウンドラフト)、吸気グリルの目詰まり、近接物による排気の滞留が着火の安定性に影響します。また、冬季は配管やドレンの凍結により流量が不足し、夏季はフィルターへの粉塵付着が増えるなど、季節要因も無視できません。再発の傾向を探るには、発生した時間帯・天候・同時使用の有無・発生場所(台所/浴室)といった条件を簡潔にメモしておくと、点検時に原因を切り分けやすくなります。なお、111の検出条件や再試行回数は機種により差があるため、取扱説明書の記載やメーカー窓口の案内に従って確認するのが安全です。
まず確認するチェックリスト
以下は取扱説明書の範囲で居住者が行える一次確認です。ガス臭・異音・焦げ臭など安全上の異常がある場合は、運転を中止し窓開放のうえガス事業者へ連絡してください。
- 他のガス機器の確認:ガスコンロやグリルが正常に点火するかを確認。全機器が不作動ならメーター遮断や供給側の要因が疑われます。
- 電源の再起動:リモコン運転をOFF→数十秒→ON。主電源プラグの抜き差し、またはブレーカーOFF→ONで制御をリセット。
- 吸排気経路の目視:PS扉・バルコニー側の吸気グリルや排気フードが、物置・洗濯物・養生シート・落ち葉・粉塵で塞がれていないか。
- 水量・同時使用:複数の湯水栓を同時に開けていないか、節水器具やストレーナの目詰まりで流量が不足していないか。
- 天候の記録:強風・突風・低温・降雪・雨量の多い日かを確認。条件が揃うと再発しやすいため日時と状況をメモ。
- LPガスの状況:ボンベ残量、容器バルブ、レギュレーター着霜などを管理会社や供給事業者へ照会(自己点検が難しい場合)。
- エラー表示の記録:111のほかに付随コードや点滅パターンがあれば控え、後の問い合わせ時に伝えられるようにします。
上記で一時的に復帰しても短時間で再発する場合は、内部の点火系(点火プラグ・フレームロッド)、燃焼空気系(ファン・圧力スイッチ)、ガス側(ガス弁・配管)、制御基板、水量検知など、専門点検が必要な領域が関与している可能性があります。ネジ外しや分解清掃、燃焼室へのアクセスは危険を伴うため厳禁です。症状が出る水栓の場所や湯温設定、同時使用の有無など、再現条件を整理しておくと診断が迅速になります。
ガスメーター遮断の復帰手順
地震や不規則なガス流量の検知時には、住戸のマイコンメーターが安全のため遮断することがあります。遮断時はすべてのガス機器が停止します。一般的な復帰の流れは次のとおりです(詳細は各社の指示に従ってください)。
- すべてのガス機器のスイッチを切り、元栓を閉じる
- メーターの復帰ボタンを押し、約1〜2分間は操作せず待機
- 表示が通常に戻ったら、ガス機器を一つずつ試運転する
ガス臭や警報器作動時は復帰操作を行わず、換気・退避のうえ、ガス事業者の緊急窓口へ連絡してください。
リモコンのリセット方法
リモコンのリセットは、電子制御の一時的な不整合を解消して着火シーケンスを正常化させるための基本手順です。操作はシンプルですが、いくつかの留意点を守ることで無用な再発や誤判定を避けられます。まず、運転スイッチをOFFにしてから30〜60秒ほど待機し、内部リレーやコンデンサの残留が抜ける時間を確保します。続いて運転ONに戻し、エラー表示が消えるかを確認します。改善がない場合は、主電源の再投入を試みます。具体的には、コンセント式ならプラグを抜き差しし、直結・ブレーカー管理なら分電盤の回路をOFF→10〜20秒→ONとします。このとき、湯水栓は閉じた状態を保ち、再起動直後の負荷を避けるのがポイントです。復帰後の試運転では、まず最も配管距離の短い水栓(台所など)で給湯運転を開始し、次に浴室、最後に追い焚きと段階を踏んで確認すると、異常が出る系統の切り分けに役立ちます。なお、短時間で再び111が表示される場合、リセットで解消できる範囲を超えた要因(点火プラグの汚損、フレームロッド検知不安定、ファン回転不良、基板の温度依存不具合、水量検知や圧力スイッチの閾値逸脱など)が疑われます。自己判断での内部清掃や電極の曲げ調整は、絶縁不良やガス漏えい、感電・火災のリスクがあります。設置年数が長い場合は特に、リモコンの再起動は一時的な回復手段に留まる可能性が高く、再発条件(時間帯・天候・同時使用・湯温設定)を整理して点検を依頼するのが安全です。また、複数台リモコンのシステムでは浴室・台所リモコンの優先設定や通信エラーが影響することもあるため、リモコン表示の同期状態(時計・温度表示・優先ランプ)も併せて確認し、記録しておきましょう。
吸排気口・フィルターの確認
111が季節や天候に連動して発生する場合、吸排気経路の乱れが着火を阻害している可能性が高くなります。マンションではPS(パイプシャフト)内やバルコニー設置の機器が一般的で、吸気グリルの埃・花粉・繊維くず、ベランダ用品・カバーリング・養生シートのはみ出し、洗濯物の一時掛けなど、日常の些細な要因が吸気量を左右します。まず、機器の正面・側面・下部の開口(機種により位置が異なる)を目視し、5mm程度の薄い綿埃やクズでも面積が広いと実効通風が著しく低下する点に留意します。柔らかいブラシやハンディモップで表面の埃を落とし、掃除機を弱運転でグリル面から離して吸い取る程度に留め、ねじ外しや内部ユニットへの接触は避けます。排気側はフード前方30cm程度の空間が確保されているかを確認し、物置やボックス、植木鉢、サンシェードの干渉を除きます。PS内機の場合は、扉のガラリ開口や上下面のスリットが布貼り・吸音材・磁石付き掲示物で塞がれていないかをチェックし、共用廊下側の風の通り道を確保します。フィルターは、機種によってはユーザー清掃を前提とした着脱式のものがあり、取扱説明書に従って取り外し・水洗い・完全乾燥を行います。不完全乾燥や強い水流での洗浄は、繊維目の変形や錆・臭いの原因になり、逆に通風を悪化させます。清掃後も改善しない場合、燃焼ファン内部の汚れや圧力スイッチの感度低下など、見えない領域の問題が残存している可能性があるため、無理にカバーを外さず専門業者に依頼してください。なお、ベランダでの一時的な養生・DIY・テント設置は、風向き次第で排気の滞留や逆流(ダウンドラフト)を招きやすく、111の誘因となります。清掃と同時にベランダ動線・物品配置の見直しを行い、家族間でも「排気前は空けておく」ルールを共有しておくと再発予防に効果的です。
強風・台風・凍結時の対処
強風・台風・寒波のような外乱は、点火安定にとって典型的なリスク要因です。まず強風・台風時は、排気が風で押し戻されるダウンドラフトが起きやすく、着火直後の炎が揺らいでフレーム検知が成立せず111が表示されることがあります。この場合、無理な連続再始動よりも、風のピークを避けて再試行し、ベランダのパーテーションや大型物品の位置を調整して排気前30cm以上の空間を確保することが重要です。PS内機では共用廊下の風速・負圧変動が影響するため、扉ガラリの塞ぎ・掲示物・吸音材の撤去を優先します。
低温・凍結期は、配管やドレンの凍結によって必要水量に達せず着火シーケンスが中断され、結果として111や関連コードが表示されることがあります。凍結が疑われる際は、熱湯の直接掛けや打撃といった急激な解凍は避け、自然解凍または市販の凍結防止ヒーター・保温材を正しく用います。エコジョーズ機では、ドレン配管の長さ・勾配・トラップの水封が不十分だと、寒波時に水封切れや氷栓で排気が乱れ、失火を誘発することがあります。ドレン経路の長すぎ・立ち上がりすぎ・外気直当たりなどの懸念があれば、施工店に経路改善(勾配確保・保温・短縮)を相談しましょう。加えて、寒波予報時は事前に機器の凍結予防運転(取説参照)や保温、夜間の極端な節水を避けて配管を動かすなど、予防的対応が有効です。いずれの外乱でも、発生日時・風速感・気温・降雪の有無・ベランダの物品配置をメモしておくと、点検時に設置環境起因の再発要因を特定しやすくなります。安全上の異常(ガス臭・警報作動・異常燃焼の兆候)がある場合は運転を中止し、窓開放・退避のうえ、関係機関へ連絡してください。
コンロは点くがお湯が出ない原因
ガスコンロは正常に点火するのに給湯器だけが111を表示する場合、住戸全体のガス遮断や供給停止よりも、給湯器本体側の条件不成立が疑われます。まず切り分けとして、湯水栓を一つだけ開ける・温度設定を中庸(40℃前後)にする・流量を急に変えないという一定条件で試験運転し、着火音の有無、作動直後に風が出るか(ファン起動音)、数秒でエラーに落ちるのか、時間差で落ちるのかを観察します。着火音が「パチパチ」と出るのに燃焼が成立しない場合は、点火プラグの汚損・ギャップずれ、フレームロッドの汚れや導通不良、アースの不良など電極まわりが典型です。着火音すら無いときは、ガス電磁弁の駆動信号や安全連動(風圧スイッチ・水量スイッチ)の成立に問題がある可能性があります。ファンが立ち上がらずに停止する場合は、ファンモータの固着や回転不足、圧力スイッチの閾値逸脱により「送風が足りない」と判断され、ガスが開かないままエラーに移行することがあります。
また、水側の条件不成立(最低作動流量に満たない)が盲点になりがちです。節水シャワーヘッド・整流器・据置浄水器のフィルター目詰まり、台所や洗面のストレーナ汚れ、古い混合水栓のカートリッジ劣化などで実流量が落ちると、着火シーケンスが開始されない、あるいは燃焼成立直後に失火判定に移ってしまいます。台所では出るが浴室では出ないといった系統差がある場合、浴室側の配管距離が長い・ストレーナやサーモユニットの目詰まり・シャワー側の節水機構が強すぎる等が典型です。こうした条件差は居住者でも確認できる範囲が多いため、水栓ごとの症状・流量感・温度設定・同時使用の有無をメモし、点検時に共有すると原因特定が早まります。なお、内部の分解清掃や電極調整、ファンの給油などは感電・ガス漏えい・火災の危険があるため行わず、専門の点検を依頼してください。
追い焚きだけ111が出る理由
ふろ給湯器は、給湯回路(蛇口・シャワー)とふろ回路(追い焚き・自動保温)で流路・センサー構成が部分的に異なります。追い焚き時のみ111が出る場合、燃焼自体の失火というよりも、循環系の水流不足や検知条件の未成立が引き金になっているケースが目立ちます。典型は、浴槽側の循環金具フィルターの目詰まり・髪の毛や繊維くずの付着、浴槽内の吸い込み口をバスピローや洗面器でふさいでしまう事例です。循環ポンプは所定の流量を確保できないと、熱交換側の温度上昇が鈍る・センサー応答が遅れる・機器が異常と判断して停止する、といった連鎖が起こり得ます。また、ふろ自動の設定水位が低すぎる、浴槽の水位が循環金具より下回るなど、物理的に循環が成り立っていない状態でも燃焼の安定が崩れます。確認のポイントは、①浴槽のゴミ取りフィルターを取り外し清掃・十分乾燥後に装着、②循環金具の吸込み口と吐出方向を妨げる物がないか、③ふろ配管の長期未清掃によるスライム・湯垢堆積の有無、④自動運転時に同時にシャワー・台所給湯を使っていないか(循環側の流量が落ちる)です。さらに、ふろポンプの作動音・振動が弱い、運転開始直後に止まる、断続的に回る等があれば、ポンプ自体の能力低下や電気系の不具合が疑われます。機種によっては、ふろ回路の温度センサーや流量検知素子の劣化・断線・接触不良が症状を類似させるため、発生タイミング(自動保温開始直後/高温差設定時/浴槽の汲み替え後)を記録し、メーカーや施工店に伝えると切り分けが容易です。居住者作業としては、浴槽水位を適正に保つ、フィルター清掃、同時給湯を控えるといった範囲に留め、配管洗浄剤の使用は取扱説明書の指示に沿って実施し、強い薬剤や高圧の自己洗浄は避けてください。
PS設置機の換気と点検ポイント
マンションで多いPS(パイプシャフト)内設置機は、限られた空間での吸気確保と共用廊下側の風圧変動に左右されやすく、111の誘因が潜みやすい環境です。PS扉のガラリ(有効開口)が布・ポスター・タオル・吸音材で塞がれている、磁石付きフックや掃除具が開口を半分以上覆う、扉下のアンダーカットがマットで埋まるなど、日常のちょっとした配置でも通風が低下します。さらに、機器正面のサービススペースに収納ケースや段ボールが置かれると、吸気流が乱れて燃焼ファンの圧力スイッチが規定値に達しにくくなり、着火シーケンスが進行しない、あるいは直後に失火判定へ移行することがあります。点検の基本は、①PS扉の開口部を全面露出させる(掲示物を外す)、②機器周り前方30〜60cmの空間を空ける、③可燃物・布類・掃除具をPS内に置かない、④清掃は目視と表面のホコリ落としに留め、カバーやビスには手を触れない、の4点です。共用廊下の負圧・突風が強い建物では、扉の開閉状態や季節風の方向で症状が変わることがあるため、発生時の扉状態(しっかり閉/半開)、廊下側の風の強さ、隣接住戸の改修工事など周辺環境もメモしておくと、管理会社・施工店との協議が進みます。なお、PSは共用部に該当する要素が多く、断熱材の追加・扉の穴あけ・ガラリサイズの変更などは管理規約上の承認が必要な場合が一般的です。善意の防音対策やDIYで開口が小さくなると、思わぬ燃焼不良やCOリスクの増大につながります。通風に関わる変更は必ず管理会社へ相談し、メーカーや施工店の基準に合致した対処を取りましょう。
マンションの給湯器エラー111:修理と交換の判断
メーカー別の傾向と対策
同じ「111=点火不良」でも、検出ロジックや自己診断の閾値、復帰の再試行回数、部品の配置・構造はメーカーや機種ごとに違いがあります。そのため、症状の出かた(着火音の有無、ファン起動の有無、数秒で落ちるのか数十秒後に落ちるのか)を詳細に把握して伝えることが重要です。問い合わせの前に整理したい情報は、①本体の型式(例:屋外壁掛・PS内据置などの設置タイプを併記)、②製造年または使用年数、③リモコン型番(浴室/台所の別)、④発生条件(強風・低温・同時使用・追い焚き時など)、⑤再現性(毎回/時々/季節限定)、⑥最近の工事や清掃・引っ越し・ベランダレイアウト変更の有無、の6点です。とくにマンションではPS内の通風条件と排気方式(FE/FF/屋外直排など)が根本的な制約になるため、メーカー・施工店はそこを最初に確認します。部品供給や設計思想にも差があります。たとえば着火系の電極・フレームロッドは消耗部品扱いで清掃や交換が想定されますが、同一名称でも形状・取り付け方法・必要クリアランスが異なり、ユーザーが共通の感覚で触ると破損・漏れ・絶縁不良に直結します。ファンモータや圧力スイッチ周りも、筐体の容積やダクト構成で必要風量の閾値が変わるため、同一の環境でも機種によりエラーの出やすさが違って見えることがあります。こうした違いを前提にすると、メーカー公式の点検・修理ルートに依頼するメリットは明確です。型式照合により既知の改善対策(サービス情報・対策部品・ソフト改修)があるか、補修用部品の保有期間を超えていないか、見積の段階で判断できるからです。問い合わせ時は写真(銘板、PS扉、排気口、周囲30〜60cmのレイアウト、ベランダの物品配置)を用意すると、電話やオンラインでも状況共有が進みます。
修理費用の目安と相場感
費用は「診断費(点検基本料)+出張費+部品代+作業工賃」が基本構成で、地域・建物条件・作業時間帯・駐車可否などで増減します。典型的なレンジとして、電極の清掃調整・簡易点検で1.5〜3万円前後、点火プラグやフレームロッド交換で2.5〜4.5万円前後、燃焼ファンや圧力スイッチ交換で3.5〜6万円前後、基板・ガス電磁弁交換で5〜8万円前後が目安です(いずれも部品・工賃・諸経費の合算イメージ)。ただし、PS内や高所、ベランダの養生が大掛かりな場合、作業時間が延びたり2人体制の出動が必要になることがあり、その際は数千〜1万円程度の上振れが起きやすくなります。見積を比較する際は、①診断費の取り扱い(修理成約時に充当/別請求)、②再訪問が必要になった場合の追加費用、③部品キャンセル時の扱い、④保証適用の可否(メーカー保証・延長保証・住宅設備保証)、⑤支払い方法(現金・カード・振込・後日精算)を確認しましょう。延長保証に加入している場合は、対象部品・上限額・出張費の扱いが保証会社ごとに異なるため、保証書と約款を先に確認するのが効率的です。コスト最適化の観点では、高額部品(制御基板・ファン・ガス弁など)が連続する兆候があれば、機器年式や今後の維持費を踏まえて交換も視野に。逆に、使用年数が浅く、明確な環境要因(強風・凍結・吸気塞ぎ)がトリガーであれば、原因除去のうえで部品交換を最小限に抑える方針が合理的です。見積は口頭ではなく内訳付きの書面で受け取り、部品名・型番・数量・単価・工賃・出張費・諸経費が明記されているかを確認してください。
交換判断の基準と選び方
交換の検討は、①設置年数(おおむね10年前後を境に主要部品の劣化・保守期限が重なる)、②故障頻度(短期間に複数部位が順次不調になる傾向)、③設置条件(PS寸法・扉厚・有効開口・排気方式・ドレン経路)、④必要能力(世帯人数と同時使用の実態に合った号数:16/20/24号)、⑤機能・省エネ(オート/フルオート、エコジョーズの採否)を総合して行います。マンションPS内では、既設機の寸法・接続芯寸法・前面サービススペースがカタログ値と合致するかが成否を分けます。扉の干渉や配管接続位置の差で、そのままでは取り付けられないモデルもあるため、現地採寸と型式照合は必須です。エコジョーズ化する場合は、ドレン排水の取り回し(勾配・凍結・臭気逆流防止)と排水先の合意(管理規約上の取り扱い)を先に確認します。選定時の実用ポイントは、①追い焚きの使い方(自動保温の頻度と浴槽容量)に合う能力、②同時給湯の場面(朝夕のシャワー・台所同時使用)に耐える号数、③低騒音モデル(共用廊下・隣戸への配慮)、④リモコンUI(優先切替の分かりやすさ、チャイルドロック、音量設定)です。施工は、管理会社の工事申請(作業時間・養生・搬入経路・エレベーター養生)に沿って計画し、廃材処分・試運転記録・ガス漏れ・排気・CO濃度・漏電の各測定を含む完了報告書の提示を依頼すると安心です。見積比較では、①本体・リモコン・交換部材・ドレン部材の明細、②既存撤去・処分費、③試運転・保証の範囲、④アフター(初期不具合の無償再訪期限)を横並びで確認しましょう。将来の維持管理を見据え、補修用部品の保有期間やメーカーのサポート体制、施工店の保守対応力(繁忙期でも連絡が取りやすいか)も重要です。価格だけでなく、居住環境・管理規約・保守体制といった「総費用(TCO)」で判断するのが賢明です。
よくある質問(FAQ)
エラー111は自分で直せますか?
安全確認と一次チェック(他のガス機器の点火確認、メーター復帰、リモコン・主電源の再起動、吸排気口の目視、浴槽フィルター清掃など)は居住者でも可能です。ただし、分解・内部清掃・電極調整・配線いじりは危険のため行わず、再発やガス臭・警報作動がある場合は点検を依頼してください。
コンロは使えるのに給湯器だけ111が出ます。原因は?
住戸全体の遮断ではなく、給湯器個別の条件不成立が疑われます。点火電極やフレームロッドの汚れ、燃焼ファン・圧力スイッチの不調、水量不足(節水ヘッド・ストレーナ目詰まり)などが代表例です。発生場所(浴室・台所)と条件(風・気温・同時使用)を記録して点検時に共有しましょう。
ガスメーターの復帰は何度まで試してよいですか?
異常がなく遮断理由が明らかな場合に限り、手順に従って1回だけの復帰を推奨します。復帰後に再遮断する、ガス臭や警報がある、操作に不安がある場合は、復帰を繰り返さずガス事業者へ連絡してください。
強風や台風のときだけ111が出ます。対策は?
排気前方30cm以上の空間を確保し、ベランダの物品(物置・シェード・洗濯物)を一時移動します。PS内機は扉ガラリや掲示物を外し通風を確保。ピーク風速の時間帯を避け、風が収まってから再始動を試みてください。
冬だけエラーが増えます。凍結が原因ですか?
配管やドレン凍結で必要水量に達しないと失火しやすくなります。保温材の補強、極端な節水運転の回避、取説にある凍結予防運転の活用が有効です。氷詰まりが疑われる場合は自然解凍を基本とし、熱湯掛けや打撃は避けてください。
追い焚き時だけ111が出ます。何を確認すべき?
浴槽の循環金具フィルター清掃、水位が循環口を下回っていないか、吸い込み口を物で塞いでいないかを確認します。ふろポンプ作動音が弱い・断続的に止まる場合は点検を依頼してください。
管理会社とメーカー、どちらに先に連絡すべき?
安全異常(ガス臭・警報・異常燃焼の兆候)がある場合はガス事業者が最優先。設備や共用部の取り扱い、PSレイアウト変更、工事申請は管理会社。機器個別の診断・修理はメーカーまたは施工店が適しています。
修理費はいくらくらいかかりますか?
目安として、清掃・調整で1.5〜3万円、電極交換で2.5〜4.5万円、ファン・圧力スイッチ交換で3.5〜6万円、基板・ガス弁交換で5〜8万円程度が一般的です。建物条件・出張費・部品価格で増減するため、内訳付き見積で比較してください。
交換の判断時期は?
設置10年前後、高額部品の連続交換、再発頻度の増加、部品供給終了見込み、PS寸法・排気方式との適合性に懸念がある場合は交換を検討します。号数(16/20/24号)やエコジョーズの採否、騒音・ドレン経路も併せて評価しましょう。
居住者がやってはいけないことは?
分解・燃焼室や配線への接触、電極の曲げ調整、ガス配管・排気ダクトの改造、強い薬剤や高圧水での配管洗浄、PS扉の開口塞ぎや勝手な改造は厳禁です。必ず取扱説明書と管理規約に従ってください。
連絡時に伝えるべき情報は?
本体型式・設置年、設置場所(PS/バルコニー)と排気方式、リモコン型番、発生条件(天候・時間帯・同時使用)、症状の再現性、最近の工事・レイアウト変更、エラー表示(111以外の付随表示の有無)を準備しましょう。
まとめ:給湯器エラー111 マンション対応の要点
- エラー111は点火不良を示し設置環境の影響も受けやすい
- 最初に安全確保と他ガス機器の動作確認を落ち着いて行う
- ガスメーター遮断時は復帰操作を行い再度着火を試す
- 強風や凍結など天候要因の有無を記録しておく
- 吸排気口やフィルターの塞がりを目視点検で確認する
- 追い焚き専用の症状はふろ配管と循環金具を点検する
- PS設置は通風確保と可燃物の持ち込み禁止を徹底する
- 再発時期や条件を控えて点検依頼の材料にする
- 自己分解や燃焼部への無理な清掃作業は行わない
- 保証書と施工伝票を準備し連絡時に型式を伝える
- 修理費用は部位により幅があり見積比較が有効
- 交換判断は年数と故障頻度と設置条件で総合評価
- PS寸法と排気方式に適合する機種を選定する
- 工事は管理会社の申請と近隣配慮の計画を行う
- 安全上の異常を感じたら速やかに事業者へ連絡する