給湯器16号と20号の違いを比較|人数別の最適号数早見表
給湯器の号数は「1分間に水温を25℃上げて何L出せるか」を示す実用指標です。16号と20号は見た目が似ていても同時使用の余裕が大きく異なります。本稿では出湯量・人数目安・同時使用・季節要因・設置条件・コストの観点から、失敗しにくい選び方を整理します。戸建てとマンションの制約差、低水圧や配管条件による体感差もあわせて確認しましょう。
- 16号と20号の性能差と向いている世帯規模
- 同時使用や冬場の水温低下を見越した選び方
- 配管径・ガスメーター容量などの必須チェック
- 初期費用とランニングコストの現実的な考え方
給湯器16号と20号の違いを解説
号数とは何か
給湯器の「号数」は、一定条件(一般にΔT=25℃上昇)で1分間にどれだけのお湯を連続供給できるかを示す能力指標です。たとえば16号は「水温を25℃上げたお湯を毎分約16L」、20号は「同約20L」供給できる設計上の上限目安を表します。ここで重要なのは、号数は“お湯が出る速さ”ではなく“同時に賄える流量の上限”という点です。体感は給水温、設定温度、住宅の水圧、配管径・配管長、フィルタの目詰まり、さらにはシャワーヘッドの吐水特性まで複合的に左右されます。冬季は給水温が低くなり、同じ設定温度を得るために必要な昇温幅(ΔT)が大きくなるため、カタログ上の能力(ΔT25℃条件)よりも実際の流量は小さくなりがちです。つまり、同じ16号でも夏場は十分でも冬場は余力不足を感じる、という現象が起こり得ます。
また、家庭内での使用はしばしば複数系統が重なります。シャワーとキッチン、湯はりと洗面といった併用は、機器の能力を複数に“分配”することになるため、上限の大きい20号のほうが温度や流量の落ち込みに耐性があります。逆に単独使用が中心で、節湯シャワーや省水型水栓を使う場合は16号でも十分快適に使えるケースが多いでしょう。選定の第一歩は、家族構成だけでなく「ピーク時間にどの系統がどの程度重なるのか」を具体的に想像し、必要な瞬時流量の合計を見積もることです。給湯器は“余裕が体感を安定させる”機器であり、ギリギリの能力よりも少し上の余力を確保すると、季節変動や来客時のストレスが大幅に減ります。
号数=毎分の最大出湯量(ΔT25℃基準)の目安。体感差は水圧・配管・季節・併用状況の影響が大きい点に留意。
項目 | 16号 | 20号 |
---|---|---|
最大出湯量(ΔT25℃) | 約16L/分 | 約20L/分 |
向く世帯規模の目安 | 1〜2人中心 | 2〜3人中心 |
同時使用の余裕 | 単独+軽い併用 | 2系統の実用併用 |
価格帯の傾向 | 比較的抑えめ | やや高め |
出湯量と人数目安
人数目安を考える際は、単純な「〇人=△号」という表だけでなく、生活パターンと同時使用の頻度を重視します。たとえば1〜2人世帯で、シャワーを単独で使う時間帯が多いなら16号で不足しにくいでしょう。省水シャワーの多くは6〜9L/分程度の吐水で設計されており、16号の上限(約16L/分)内で十分に賄えます。一方、2〜3人世帯で「朝のシャワーとキッチンの洗い物が重なる」「夜の湯はりと調理・片付けが同時に進む」といった場面が日常化しているなら、20号の余力が快適性を左右します。能力に余裕があれば、温度制御が安定し、蛇口側で無理に絞らずとも狙いの温度が得やすくなります。
4人以上の世帯、あるいは来客が多く浴室・洗面・キッチンのピークが重なる家庭では、24号の検討で“待ち時間”と“温度ムラ”の不満が減少します。なお、節湯型シャワーヘッドや定流量弁の活用は、体感の底上げに寄与しますが、低水圧や細い配管によるボトルネックがあると効果は限定的です。加えて、住宅の配管距離が長い場合、立ち上がり時間(ぬるい水が抜けるまでの時間)が延び、結果的にお湯の消費も増えます。家族構成の将来変化(出産・同居・子の成長)や在宅時間の変化も考慮し、少し余裕側の号数を選ぶと再交換の頻度を下げ、総コストの最適化につながります。
- 1〜2人世帯:単独使用中心なら16号が現実的
- 2〜3人世帯:併用が出やすいなら20号で安定
- 4人以上・来客多:24号でピーク耐性を確保
“人数”より“同時使用の中身”を可視化。シャワーL/分+キッチンL/分+洗面L/分の合計が、選ぶ号数の現実解になります。
同時使用時の湯量
同時使用の要点は「能力の分配」です。たとえば省水シャワーが毎分8L、キッチンが3〜5L、洗面が2〜3L程度だと仮定すると、シャワー+キッチンで11〜13L/分、さらに洗面が重なれば13〜16L/分に達します。16号は理論上この範囲をカバーできますが、冬季の給水温低下で昇温幅が大きくなると実効流量は目減りし、蛇口側で水栓を開いたままでも温度が上がりにくい、あるいは温度が不安定になることがあります。20号は最大能力が約25%大きいため、同じ併用でも“余力”が働き、温度ムラや湯量不足の発生が抑えられます。さらに、追い焚きや高温差し湯、浴室暖房乾燥など熱負荷の高い機能を同時に使うと、総熱量の要求が増すため、号数の余裕は体感上の安定に直結します。
実務的には、朝晩のピーク時に想定される併用パターンを表に書き出し、各系統の目安流量を足し合わせて上限を見積もる方法が有効です。また、吐水量の大きいシャワーヘッドや食洗機の給湯接続、サーモ混合栓の特性も“必要流量”を底上げします。家族の生活動線や使用時間が重なる場合は、20号以上を選ぶことで操作感(レバーを少し開くだけで狙い温度に到達する感覚)も改善され、無用な開度調整や再加熱を減らせます。結果として、必要な温水を短時間で取り出せるため、単純な号数アップ=ガス代増ではなく、むしろ使用時間の短縮による省エネにつながるケースも少なくありません。
同時使用が前提の家庭で16号を選ぶと、冬場や来客時に“ぬるい・弱い”が発生しやすい傾向。ピーク前提なら能力の余裕を優先。
冬の水温低下の影響
冬季は給水温が大きく下がり、同じ設定温度を得るために必要な昇温幅(ΔT)が拡大します。たとえば夏場に給水温20℃から40℃へ上げる(ΔT=20℃)状況と、冬場に10℃から40℃へ上げる(ΔT=30℃)状況では、後者のほうが単位時間あたりに必要な熱量が増えるため、機器は能力上限に達しやすく、結果として「出湯量の自動抑制」や「温度の微妙な上下」を感じやすくなります。16号で夏は満足だったのに冬になると“ぬるい・弱い”と感じる典型的な理由がこれです。加えて屋外配管が長い、露出が多い、断熱が弱いといった住宅側の条件が重なると、配管内で熱ロスが生じ、蛇口に到達するまでの立ち上がり時間が延びます。これにより使用者はレバーを大きく開けがちになり、瞬間的に流量が増えてさらに機器が上限に到達、温度制御が不安定になる悪循環が発生します。
20号は最大出湯量の余力が大きいため、冬季のΔT拡大時でも目標温度に到達しやすく、併用時の温度ムラ耐性も高まります。とはいえ、号数アップだけで万能ではありません。止水栓の開度が絞られている、ストレーナ(フィルタ)が目詰まりしている、シャワーホースや節湯金具にスケールが堆積している、といった“通り道”の問題があると、理論値どおりの流量に届きません。冬前にフィルタ清掃や保温材の巻き直し、露出配管の断熱補強を行うと、体感の改善が見込みやすくなります。また、浴室・洗面のサーモ混合栓は設定温度に達しないとき自動的に給水側を絞るため、配管や機器のわずかな条件差が温度ムラとして表面化しやすい点にも留意が必要です。
冬の不満は「ΔT拡大+配管の熱ロス+併用」の三重奏で起きやすい。号数の余裕確保と“通り道”の健全化をセットで対策。
都市ガスとプロパン差
給湯器はガス種(都市ガス13A/LPガス)ごとに噴出孔径や燃焼制御が設計されており、同じ号数でもガス種の違いで適合機が異なります。交換時は必ず既設のガス種に合致する型式を選びます。体感面では、ガスメーターの容量(例:メータ記号により供給可能流量が規定)や供給圧、ガス配管径・配管長、分岐の取り方が効いてきます。たとえば20号を導入しても、メーター容量が小さく機器が要求するガス流量を満たせなければ、最大能力が発揮されず、燃焼度合いが抑制される場合があります。配管側の圧力損失が大きいケースでも同様で、ピーク時のシャワー+キッチン併用で火力が伸び切らず「お湯は出るが力強さが足りない」という印象になります。
LPガスは単位体積あたりの発熱量が都市ガスより高い一方、ボンベ・調整器・供給配管の状態や残量によって供給安定性が左右される場面もあります。定期点検やボンベ位置の通風確保、調整器の交換時期など、保安面の整備は体感の安定にも寄与します。都市ガスでは、メーター遮断(瞬間的な異常流量等で作動)やガス栓の開度不足が潜在的なボトルネックになりがちです。いずれのガス種でも「メーター容量」「配管径」「分岐設計」を施工店に提示してもらい、選ぶ号数に対して供給側の条件が整っているかを確認すると、購入後の“想定外の伸び悩み”を防げます。なお、ガス種変更(LP⇔都市)を伴う交換は、配管・調整器・機器すべての適合確認と各種手続きが必要になるため、計画段階で十分な現地調査が不可欠です。
号数の前にガス供給条件を点検。メーター容量と配管径が機器の要求を満たすかの整合性確認が“体感”の土台になります。
追い焚き中の給湯
追い焚きは浴槽内の湯を循環させて加熱する機能で、同時に熱源(燃焼)を使用します。したがって、追い焚き運転中にシャワーやキッチンを併用すると、機器の能力が二つの需要に分配され、能力に余力がない場合は給湯側の温度が下がりやすくなります。16号では単独使用時に問題がなくても、冬場に「追い焚き+シャワー+洗面」が重なると温度ムラや湯量低下が顕在化しやすく、使用者は水栓を操作して温度を探る回数が増えがちです。20号は最大能力の余裕からこのような場面での安定度が高く、特に浴槽の湯温を維持しながらシャワーを使う家庭では、体感差が出やすい領域です。
さらに、フルオート機の自動たし湯・保温・配管洗浄などの機能は、運転状況によって断続的に熱需要を発生させます。これが給湯使用とタイミング的に重なると、瞬間的な火力配分の変動が起き、温度の微小な揺らぎとして感じられることがあります。改善策としては、(1)ピーク時間に保温・たし湯が重ならないようリモコンのタイマーや運転優先設定を見直す、(2)浴槽の断熱フタで保温ロスを減らし追い焚き頻度を下げる、(3)同時使用が常態なら20号以上へ号数アップする、の三段構えが有効です。加えて、風呂配管のフィルタ清掃やエア噛み対策、循環金具の点検は基本中の基本で、循環不良があると追い焚き時間が延び、結果的に給湯側の余力を圧迫します。家族の生活パターン上、どうしても併用を避けられない場合は、能力余力のある機種と適切な運転スケジュールで“重ならない時間帯”を作ることが、体感安定への近道です。
追い焚き併用時の温度ムラは“火力の取り合い”が原因。運転タイミングの調整と号数の余裕確保で実用安定性が向上します。
低水圧住宅の注意
低水圧の住戸(高層階・受水槽経由・減圧弁あり・配管経年劣化など)では、給湯器の号数を上げても体感流量が頭打ちになりやすいのが実情です。理由はシンプルで、給湯器は“通ってくる水”を瞬時に加熱する機械であり、入り口の圧力と通路の抵抗が支配的だからです。たとえば古い止水栓が半開だったり、ストレーナ(フィルタ)にサビや砂が堆積していたり、節湯金具のエアレーターがスケールで目詰まりしていると、理論上の最大流量に達する前に圧力が失われます。とくに集合住宅では、縦配管・枝配管・器具の組み合わせで圧力損失が積み上がり、シャワーやサーモ混合栓の背圧(必要最低圧)が満たせず、温度が安定しない症状として現れがちです。まずは「止水栓を全開にする」「ストレーナを清掃する」「エアレーターやシャワーヘッドを洗浄/交換する」といった“通り道の整備”を優先しましょう。これだけで体感が一段改善するケースは少なくありません。
それでも改善が限られる場合は、低水圧対応機の選定や、配管の途中にある減圧要素(古い減圧弁・細径継手・不要な分岐)の是正を検討します。シャワー重視の家庭では、定流量・節水型シャワーヘッドのうち、低圧でも霧化や脈動で“当たり感”を作るタイプを選ぶと満足度が底上げされます。また、サーモ混合栓は設定温度を維持するために、湯側・水側を自動で絞り込む制御を行いますが、そもそもの流量が不足していると調整幅が尽き、温度の揺らぎにつながります。シャワーとキッチンの併用が多い家庭は、ピーク時間に使用順序をずらすだけでも、温度ムラや弱さの不満が緩和されます。加えて、配管の長距離・露出区間が多い住戸は、断熱材の補修や保温カバーの追加で立ち上がり時間の短縮が期待できます。総じて、低水圧環境では「号数アップ=万能解」ではなく、①通り道の整備、②器具側の最適化、③使用タイミングの工夫、の三層で対策を積み上げるのが現実的です。
低水圧対策は“入口の圧”と“通り道の抵抗”の改善が先。号数は、その土台が整って初めて効いてきます。
給湯器16号と20号の違いと選び方
配管径とメーター条件
20号以上を導入する際の見落としがちなポイントが「配管径」と「ガスメーター容量」の整合性です。給水・給湯・ガスそれぞれの配管径が細すぎる、あるいはメーター容量が小さいと、機器が求める流量・燃料供給に届かず、最大能力の手前で頭打ちになります。古い住戸では、継手の多用や不要な分岐、長年のスケール付着により内径が事実上細くなっていることも珍しくありません。見積り段階で「給水・給湯・ガス配管の口径」「主幹から機器までの配管距離」「分岐の位置」「止水栓・ガス栓の型・開度」「メーターの規格・設置場所」を写真と簡易図で共有し、施工店に“能力を活かし切れるか”を確認してもらいましょう。とくにガス側は、燃焼時の一時的な需要増に対して供給が追いつかないと、安全装置の作動や燃焼度の抑制が起き、結果として「20号に替えたのに伸びが足りない」という体感差につながります。
配管がボトルネックの場合、部分的な改修(細径区間の入れ替え、継手の整理、腐食区間の更新)で実効流量が改善します。PS(パイプスペース)内や壁内の配管は触りにくい反面、露出区間での処置や止水栓・ストレーナの更新だけでも効果が出る場合があります。あわせて、機器直近のストレーナ清掃は必須です。工事見積では「配管改修の有無」「必要部材と範囲」「試運転での流量・温度の実測方法」「追加が発生する条件」を明記してもらうと安心です。なお、将来的に浴室乾燥機・高温差し湯・床暖などの熱需要を追加する計画があるなら、現時点でわずかに余裕側の号数・配管仕様にしておくと、後の追加工事が軽くなります。逆に、単独使用中心で水栓も節水型が多い家庭は、過度に大きな号数を選んでも“宝の持ち腐れ”になりかねません。生活パターンと設備計画、そして供給側条件の三点を同時に満たすのが、後悔しない選び方です。
「号数>配管・メーター」のアンバランスは失敗の典型。写真+図面+現場計測で“活かし切れる設計”を固めましょう。
戸建て・マンション差
戸建てとマンションでは、設置環境・配管距離・排気条件が大きく異なります。戸建ては屋外壁掛けが主流で、排気方向の自由度が高い一方、機器から浴室・キッチンまでの配管距離が長くなりがちで、立ち上がりに時間を要する傾向があります。給湯器の位置が外壁の端に寄っている場合は、浴室側に近い面へ移設するだけで“お湯が出るまでの待ち時間”が短縮されることも。配管の露出区間が多い戸建てでは、保温材の補修や厚手化で冬場の熱ロスを抑えられ、結果として設定温度への到達が安定します。さらに、屋外設置は風雨・日射・凍結の影響を受けるため、直射を避ける設置・凍結予防ヒーター・ドレンの凍結対策など環境由来の対処が有効です。
一方マンションは、PS(パイプスペース)内設置や共用部への排気規制により、選べる型番・サイズ・排気カバーが限定されます。PS枠の寸法や前面スペース、開口位置が少し違うだけで適合可否が変わるため、交換前に現状写真(正面・側面・上部・排気の抜け方向)と型番銘板を必ず共有しましょう。排気アダプタやふところ寸法の兼ね合いで、同じ号数でもシリーズが限定されることがあります。また、集合住宅は水圧が時間帯で変動しやすく、上階では圧が低めに出るため、低水圧対応や立ち上がりの改善策(止水栓・ストレーナ清掃、器具の最適化)が体感に直結します。音・振動に配慮が必要な住環境では、壁への伝播を抑える取付金具やゴムブッシュの状態も点検しましょう。総合的には、戸建ては“配管距離と外気環境”、マンションは“PS適合と排気・圧力条件”がボトルネックになりやすく、同じ16号・20号でも最適解が変わります。現地条件に合わせた後継選定と、必要に応じた付帯工事の最小化が、費用対効果を高める鍵です。
戸建て=外気・距離、マンション=PS・排気・圧力が要点。同じ号数でも環境で“体感”は大きく変わります。
エコジョーズと光熱費
省エネ観点では、号数の違いと同じくらい「熱効率(ロスの少なさ)」が体感と家計に効いてきます。エコジョーズ(潜熱回収型)は、排気に含まれる熱を再利用して効率を高め、従来型より同じ湯量を少ないガスで賄える設計です。重要なのは「適正号数×高効率×短時間供給」という三点セットで、能力が不足して使用時間が引き延ばされると、効率が良くてもトータルのガス使用量が増えることがあります。たとえば、16号でシャワーとキッチンを併用して温度が不安定になり、温度合わせや待ち時間が増えると、その分だけ燃焼時間が延びて非効率です。20号で余力を確保し、必要な時に必要な量を素早く取り出すほうが、結果的に燃焼時間を短縮できるケースは少なくありません。
また、エコ運転(流量制御や燃焼制御による省エネモード)は、立ち上がり・設定温度・同時利用の影響を受けます。ピーク時に複数系統が重なる家庭では、節湯シャワーや定流量弁の併用が相性良く、無理に水栓を絞らなくても狙いの温度・流量が安定します。配管の断熱も見逃せません。屋外露出区間の保温材が痩せていると熱ロスで再加熱が増え、ガス代だけでなく“待ち時間”という形で体感コストが膨らみます。さらに、温度をむやみに高く設定して水側で薄める運用は無駄が出やすく、必要温度に近い設定にして蛇口開度を最小限にするのが実務的な省エネです。総合すると、「余力のある号数で短時間に供給」「高効率機でロス削減」「配管・器具の改善でムダな再加熱を抑制」という三層の最適化が、月々の光熱費と快適性の両立に直結します。
省エネは機器性能+使い方+設備状態の総合格闘技。余力で時短し、高効率でロスを減らし、配管・器具でムダを止めるのが王道です。
初期費用と交換相場
同一グレードで比較した場合、20号は16号より本体価格がやや高くなるのが一般的です。ここに、追い焚きの有無(給湯専用/オート/フルオート)、設置形態(屋外壁掛け・PS内・据置)、排気部材の要否、リモコンセット(浴室・台所・増設)の構成が乗ってきます。工事費は、既設の撤去処分、据付・配管接続、試運転・漏れ確認までを「標準工事」とし、位置変更や配管延長、排気カバー追加、配線やコンセント増設、PS内の寸法調整などは「追加工事」扱いになるのが通例です。見積比較で重要なのは、(1)本体とリモコンの型番が明記されているか、(2)標準工事の範囲が統一されているか、(3)追加工事の発生条件と単価が書かれているか、(4)保証年数(本体・工事)が別々に示されているか、の四点です。
費用を抑えたい場合でも、最安値だけで決めると設置条件との不一致で当日追加が発生し、結局割高になるリスクがあります。事前に設置写真(正面・側面・上部・配管・排気の抜け方向)と現行型番を共有し、後継適合と必要部材を確定させてから比較しましょう。さらに、長期使用を想定するなら延長保証の価格と範囲(熱交換器・基板・ポンプ等の対象)を確認し、故障時の出張費・診断費を含むかも要チェックです。なお、20号へ号数アップする場合、稀に配管改修やメーター容量の見直しが必要になることがあり、その場合は本体差額以上のコスト差が出ます。逆に、生活パターンから見て16号で十分な家庭が過大な号数を選ぶと、本体差額を払う割にメリットが体感に現れにくくなります。つまり、費用の最適化は「自宅条件×生活パターン×将来計画」を丁寧にすり合わせることに尽きます。
見積り項目 | 確認ポイント | 失敗回避の着眼 |
---|---|---|
本体型番 | 号数・ガス種・設置形態 | 現行の後継互換と寸法 |
リモコン | 台所・浴室・増設の有無 | 専用品かつ同時交換が確実 |
標準工事 | 撤去・据付・接続・試運転 | 処分費・出張費の含有 |
追加工事 | 排気・配管延長・配線 | 発生条件と単価の明記 |
保証 | 年数・範囲(本体/工事) | 延長保証の条件・免責 |
「当日追加で高くなった」を防ぐには、事前の写真・型番共有と、標準/追加の境界条件を見積書で固定するのが近道。
メーカーと型番の見方
主要メーカー(例:ノーリツ・リンナイ・パロマ等)の型番は、号数・ガス種・設置形態・機能(追い焚きの有無、オート/フルオート)などの情報を符号化しています。交換時は、まず現行機の銘板でガス種(都市ガス13A/LP)、設置形態(屋外壁掛け・PS内・据置)、排気方式、追い焚き有無を確認し、同等条件の後継シリーズから選ぶのが基本です。そのうえで、生活パターンに応じて16号→20号へ号数アップ、従来型→エコジョーズへ高効率化といった“上流方向の見直し”を検討します。リモコンは機種専用で互換制限が強いため、本体とセットで更新するのが確実です。古いリモコンや他社リモコンの流用は、誤動作や安全機能の非対応につながる恐れがあります。
PS(パイプスペース)設置のマンションでは、ふところ寸法・前面スペース・排気アダプタの形状が適合の可否を左右し、同じ号数でもシリーズが限定されることが少なくありません。写真と寸法を施工店へ共有し、型番レベルで“入ること”“安全に排気できること”を事前に確定させましょう。将来の拡張(浴室乾燥機・高温差し湯・床暖等)を見込むなら、インターフェースや増設対応の有無、必要部材(分岐金具・循環金具)の有無まで含めて確認するのが安心です。さらに、近年は低水圧対応・微少流量立ち上がり改善・学習制御(使用パターンに応じた燃焼最適化)など制御面の進化もあり、同じ号数でも“使い勝手”が大きく異なります。型番表の記号だけでなく、カタログの「最小出湯量」「立ち上がり流量」「低温度域での安定性」等の指標を比較し、体感に直結する項目で選ぶ姿勢が、後悔のない買い替えにつながります。
型番=適合条件の言語。銘板で現状を確定→後継シリーズで適合→必要なら号数・効率を見直す、の順で絞り込むのが効率的。
給湯器16号と20号の違いまとめ
- 一人から二人の世帯は単独使用中心なら十六号が現実的
- 二人から三人の世帯は併用が多く二十号で体感が安定
- 四人以上や来客が多い家庭は二十四号でピークに強い
- 選定は人数より同時使用の有無と時間帯の重なりが核心
- 冬は給水温が下がり昇温幅が増えるため余力の有無が重要
- 追い焚きと給湯の併用は火力分配が起き二十号が有利
- 低水圧や配管詰まりがあると号数を上げても効果は限定
- 配管径とガスメーター容量が不足すると能力を活かせない
- 戸建ては配管距離と外気の影響が大きく断熱補強が有効
- マンションはPS制約と排気条件を満たす型番選定が必須
- エコジョーズは高効率で時短供給と組み合わせると省エネ
- 必要温度に近い設定と節水器具の活用で無駄な再加熱を抑制
- 見積は型番工事範囲追加条件保証内容の明記が比較の要点
- 写真と現行型番を事前共有し当日の追加費用リスクを低減
- 将来の家族変化や設備増設を見込み余裕側で再交換を回避
- フィルタ清掃と止水栓開度確認で体感の底上げが期待できる
- 給湯器十六号と二十号の違いは生活パターンで最適解が決まる
FAQ(よくある質問)
Q. 16号と20号で迷っています。人数だけで決めても大丈夫ですか?
A. 人数は目安の一つに過ぎません。朝晩のピークに何系統を同時使用するか(シャワー+キッチンなど)で必要能力が大きく変わります。併用が多い家庭は20号が安定しやすい傾向です。
Q. 16号でもシャワーは快適に使えますか?
A. 単独使用中心で省水シャワーを使うなら16号で快適なケースが多いです。シャワーと他の給湯(洗面・台所)が重なるなら20号以上の余裕が有効です。
Q. 冬になるとお湯が弱く感じます。号数を上げれば解決しますか?
A. 冬は給水温が下がり必要な熱量が増えるため、能力に余力がないと体感が落ちます。号数アップは有効ですが、同時に止水栓・フィルタ・配管の状態や断熱も点検しましょう。
Q. 都市ガスとプロパンで推奨号数は変わりますか?
A. 大枠は同じですが、メーター容量・配管径・供給圧など環境要因で体感が変わります。交換時は必ずガス種に合う機種を選び、供給条件の適合も確認してください。
Q. 追い焚き中にシャワーを使うとぬるくなります。対策は?
A. 熱源の取り合いが原因です。20号以上で余力を確保する、追い焚きの保温・たし湯タイミングをずらす、浴槽の保温性を上げるなどの対策が有効です。
Q. 低水圧のマンションです。20号にしても改善しますか?
A. 入口の圧が不足していると号数アップの効果は限定的です。低水圧対応機の検討に加え、止水栓やストレーナ清掃、器具の見直しなど“通り道”の改善を優先しましょう。
Q. エコジョーズにするとガス代は下がりますか?
A. 一般に効率向上で削減が期待できますが、使い方次第です。適正号数で必要量を短時間に賄い、配管の断熱や節湯器具と組み合わせると効果が安定します。
Q. 本体以外に一緒に交換すべき部材は?
A. 専用リモコンは同時交換が基本です。設置形態により排気カバーや取付金具、必要に応じて配管部材も更新します。見積り段階で型番と範囲を明記してもらいましょう。
Q. PS(パイプスペース)設置ですが、20号へ号数アップできますか?
A. スペースや排気条件で可否が分かれます。PS寸法・前面スペース・排気アダプタ形状の適合確認が必須です。写真と現行型番を共有して施工店に判断してもらいましょう。
Q. 16号から20号へ替えるとガス代は上がりますか?
A. 能力が大きくても常に最大で燃焼するわけではありません。併用時の待ち時間や再加熱が減れば、むしろ使用時間が短縮され実使用量が安定する場合もあります。
Q. うちに最適な号数を簡単に判断する方法は?
A. ピーク時間に同時使用する系統(シャワー・キッチン・洗面・湯はり)を書き出し、概算のL/分を合計します。合計が16L/分付近なら20号、20L/分超なら24号も検討が安全です。
Q. 交換の見積りでチェックすべきポイントは?
A. 本体型番・リモコン型番、標準工事範囲、追加工事の発生条件と単価、保証年数(本体・工事)を統一フォーマットで比較してください。設置写真の事前共有も有効です。