給湯器PS設置とは扉内・標準の違いと交換費用の相場を解説
マンションの給湯器はパイプスペース内に設置するPS設置が主流です。本記事では給湯器のPS設置とは何かをわかりやすく整理しつつ扉内設置と標準設置の違い排気方式FEとFFの基礎設置寸法や開口条件交換費用の相場や見積りの見方までを体系的に解説します。初めての交換でも迷わないように実務の確認ポイントも具体化します。
- PS設置の基本と扉内設置と標準設置の違い
- 排気方向とFE方式FF方式の選定基準
- 設置寸法開口ルーバー点検スペースの要点
- 交換費用の相場と見積り確認の実務ポイント
給湯器のPS設置とは 基礎知識
- PS(パイプスペース)の定義と管理区分
- 標準設置と扉内設置の違いと見分け方
- 排気方向の種類と選定基準
- FE方式とFF方式の使い分け
- 設置寸法・点検スペース・扉開口とルーバー
- 扉あり/なしで変わる注意点
PS(パイプスペース)の定義と管理区分
PS(パイプスペース/パイプシャフト)は、建物の給水・給湯・排水・ガス・電気・通信などの縦配管・配線類をまとめて収める共用の縦穴空間を指します。マンションの共用廊下側や住戸境界付近に設けられることが多く、内部には配管支持金物、点検口、場合によっては消音材や防火区画の貫通部材が配置されます。給湯器の「PS設置」とは、このPS内部に機器本体を納め、前面を共用廊下側に向けて据え付ける方式の総称です。PSは管理組合の管理対象(共用部)となるため、所有者の専有判断だけで交換・変更ができるわけではありません。工事に際しては、管理規約・使用細則・工事申請の有無、作業時間帯の制限、養生範囲、騒音配慮、廃材搬出経路などを事前に確認します。また、安全面では、可燃物との離隔、吸排気の経路確保、一酸化炭素(CO)滞留の防止、ガス種の一致、止水・遮断設備の位置確認、点検・緊急対応時のアクセス性が重要です。さらに、PSは空間が限られるため、据付時は「有効幅・有効奥行・有効高さ」と「前面の作業域(点検スペース)」を同時に満たす必要があります。これらの条件を満たさないと、点検パネルが開かない、配管が応力を受ける、排気が滞留するなどの不具合につながるため、現地調査で寸法・配管取り回し・扉の開口状況を実測し、機器の仕様書と照合してから機種選定を行うことが求められます。
標準設置と扉内設置の違いと見分け方
PS標準設置は、PS内に機器を納めつつ前面が共用廊下側に露出する構成で、前面サービス性(カバー着脱・バーナー部点検・リモコン線やガス栓アクセス)が良好です。一方、扉内設置はPS開口部に金属扉(ルーバー付きが多い)やパネルを設け、その内側に機器を完全に収める方式で、外観がすっきりし、風雨や塵の直接侵入を抑えられる利点があります。相違点としては、①吸排気条件(扉内はルーバー面積や風路曲がりの影響を受けやすい)、②寸法条件(扉厚み・額縁・補強リブが前面作業やカバー着脱に干渉しやすい)、③音・熱の感じ方(扉内は共鳴や熱滞留に注意)、④メンテ性(扉の開き角・ヒンジ位置・ストッパーの有無で作業性が変わる)、⑤安全・申請(扉の鍵や閉鎖状態により点検時のアクセス手順が増える)などが挙げられます。見分け方は、PS前面に独立した金属扉があり、給湯器本体が外部から直接見えないものが扉内設置、前面に機器の化粧パネルが直接見えて触れる構成が標準設置です。交換計画では、扉の有効開口寸法(幅・高さ)、扉厚、ヒンジ位置と開き角、ラッチやドアクローザーの位置、額縁のかかり代、床見切り(段差)などを採寸し、機器本体の前面カバーが全開できるか、配管作業・部品交換が前面から完結するかを具体的に検証します。とくに扉内では、ルーバー面積不足や風路の曲がり過多が燃焼安定性を損なう原因になるため、既設条件の踏襲可否を慎重に見極めます。
排気方向の種類と選定基準
PS設置用の給湯器は、前方・後方・側方・上方など排気方向が機種ごとに固定されています。選定の基本は「既設のダクト・排気トップ・扉ルーバー位置との一致」です。たとえば既設が前方排気で扉ルーバー前へ直線的に排気している場合、後方排気に置き換えるとPS内部で排気が回り込み、滞留・逆流・結露・共鳴音の増加を招く恐れがあります。側方排気では、隣接する配管・金物・壁との離隔を満たしつつ、排気が障害物に当たって反転しないよう配慮が必要です。上方排気(ダクト接続型)の場合は、ダクト径・延長・曲がり数(エルボ)の上限、ダクト支持、結露対策、貫通部の防火処理など、据付説明書の条件を厳密に満たすことが必須です。選定基準としては、①既設排気方向の踏襲、②扉のルーバー位置と面積、③ダクト長と曲がり数の制限、④周辺への熱・臭気影響(共用廊下や階段室の換気状態)、⑤将来のメンテ性(清掃・部品交換時のアクセス)、⑥騒音・振動の伝播経路(扉パネルの共振、ダクト支持部の鳴き)を総合評価します。現地調査では、排気トップの形状、ダクト断熱の有無、隙間や目張り跡、扉裏の煤汚れの有無なども手掛かりになります。排気方向を安易に変更すると、燃焼の安定性や安全性を損なう可能性があるため、原則は現状同等・同条件での後継更新を第一候補に据え、やむを得ず変更する場合はメーカー条件内で詳細設計し、計算上・実機上ともに余裕を確保することが望まれます。
FE方式とFF方式の使い分け
FE(強制排気)とFF(強制給排気)は、いずれもファンで排気を行う点は共通ですが、給気の取り方が異なるため適用条件や注意点が変わります。FEはPS内部(室内扱い)から給気し、ファンで屋外へ排気する方式です。PSの換気量や扉ルーバー開口が十分で、燃焼に必要な空気が常時供給される前提で成立します。扉内でルーバー面積が不足したり、季節や気圧差でPS内が負圧になりやすい建物では、燃焼が不安定になったり、排気が回り込んでCO濃度が上がるリスクがあるため、既設と同条件であっても現地の風量・風路の実態を点検することが欠かせません。対してFFは屋外から専用ダクトで給気し、同時に屋外へ排気する密閉燃焼型です。PSが密閉度の高い扉構成で換気が確保しにくい場合や、共用部の気流に影響されやすい立地(風の吹きだまり、吹き上げ)ではFFが有効です。FF化は燃焼安定性の面で優位ですが、同軸/二本管のダクトルート確保、曲がり数と延長の上限、貫通部の防火処理、結露対策、端末部の離隔など追加条件が増えます。いずれの方式でも、ダクト接続部の気密不良は騒音・結露・臭気漏れの温床となるため、ガスケットやクランプの規定トルク、シール材の適合確認を徹底します。更新時の判断軸は、①既設方式の踏襲可否、②PS扉の開口面積と換気量、③ダクト計算(延長・エルボ換算抵抗)、④点検作業性(前面アクセスの確保)、⑤将来の交換容易性です。最終的には据付説明書の条件内で余裕を持つ仕様に収め、試運転ではCO/CO₂比、燃焼音、ドラフト、着火復帰性を確認記録し、季節風が強い時期の挙動も想定しておくと安心です。
設置寸法・点検スペース・扉開口とルーバー
PS設置は限られた空間での作業となるため、寸法計画の精度が仕上がりと安全性を左右します。まず「PS有効寸法(幅×高さ×奥行)」を化粧材を含む内々で実測し、本体外形寸法に対し左右10〜20mm、上部はアダプター接続作業分の余裕を見込みます。奥行は本体奥行に「背面クリアランス+配管・ガスホースの逃げ+ドレン勾配」を加算して算定し、前面はパネル全開、熱交換器洗浄や電装交換が前方から完結できる作業域を確保します。扉内の場合は「扉厚」「額縁のかかり」「補強リブ」「ラッチ・受け金物」「ドアクローザー」「戸当たり」の位置が前面作業やカバー着脱に干渉しやすく、開き角(理想は100°以上)によっては一部ユニットが抜けないケースもあります。ルーバーは吸排気の生命線で、面積が不足すると負圧や滞留が生じ燃焼が不安定になります。上下2段のルーバー配置や、風路を遮る断熱材・配線束の整理で実効面積を確保し、清掃性も考慮します。ダクト接続型では、ダクト径の適合、エルボ換算抵抗、吊り金物のピッチ、熱橋となる金属部の結露対策(保温・ドレン受け)、端末の離隔と防虫網の目詰まりリスクをチェックします。採寸は「本体」「アダプター」「配管ルート」「扉の開閉軌跡」を同一スケールでスケッチ化し、撤去・搬入経路(廊下・EV・階段)の転回寸法まで含めて事前検証しておくと、当日の作業短縮と追加工事の回避に大きく寄与します。
扉あり/なしで変わる注意点
扉あり(扉内設置)は美観・防雨・防塵性に優れ、共用廊下への熱風・臭気の影響を抑えやすい一方、扉が風路に介在するため燃焼空気の流入・排気の流出に制約がかかります。ルーバー面積の不足、扉裏リブによる風路の曲げ、戸当たりゴムの過圧着などは、燃焼不良や共鳴音の原因になりがちです。ヒンジ側の逃げが少ないと前面パネルの取り外しが難しく、リモコンケーブルやガス栓の作業性が損なわれます。鍵付き扉では緊急時アクセス手順(鍵の保管・管理人立会い)を取り決め、点検周期に合わせて開閉動作を確認しましょう。扉なし(標準設置)は風路が直線で、ダクト接続も短くできるため燃焼は安定しやすい反面、共用廊下側に熱風や臭気が直接出やすく、近接する可燃物・郵便受け・掲示板・植栽などへの離隔と、居住者動線への配慮(高温排気に触れない導線)が必要です。騒音面では、扉内はパネル共振音や箱鳴りが出ることがあり、緩衝材追加・固定金具の締結力適正化・ダクト支持の見直しで改善できます。腐食対策としては、海沿い・幹線道路沿いでは扉内に塩害・粉塵が堆積しやすく、定期清掃と防錆グリスの活用が有効です。どちらの方式でも、扉の開き角・ストッパー位置・クローザー速度を施工前に調整し、運転時に扉が半閉状態で振動共鳴しないかを試運転で確認しておくと、後日のクレーム予防につながります。
給湯器のPS設置とは 選定と工事
- 号数の目安と選び方
- メーカー別PS対応と型番の見方
- 交換工事の流れと必要部材
- エコジョーズのドレン排水と凍結対策
- 費用相場と見積りの確認点
- 法規・防火・排気安全の要点
- メンテと故障時の初期対処
- まとめ:給湯器のPS設置とはの要点
号数の目安と選び方
号数は「一定条件下で1分間に供給できるお湯の量(L/分)」の目安で、生活動線と同時使用の有無を基準に決めます。一般的には、1〜2人暮らしで16号、2〜3人で20号、3〜4人で24号が多く採用されますが、実態は住戸の水圧、給水管径、浴槽サイズ、浴室暖房乾燥機の有無、追い焚きの頻度、朝夕のピーク同時使用(台所+洗面+シャワー)などの要因で必要流量が変動します。たとえばシャワー1系統で8〜10L/分、台所は5〜8L/分が一つの目安で、これらが重なる時間帯が長い家庭は余裕のある上位号数がストレスを減らします。また、エコジョーズでは低負荷域の効率が向上する一方、設定湯温と給水温の差が大きい冬場は出湯量が下振れしやすいため、寒冷地や北面配管の住戸では余裕を見ます。PS設置では空間制約により同系列でも号数ごとに奥行やアダプター構成が異なる場合があり、単純な号数アップがそのまま適合しないことも少なくありません。さらに、ガス種(都市ガス13A/LP)の供給能力、既設ガスメーターの容量、ガス栓位置と配管径、電源(100V)回路の余裕も要確認です。とくに浴室暖房乾燥機を同時使用する追い焚き付ふろ給湯器は、ふろ自動+給湯の重畳運転時に能力差が顕在化します。最終判断は、世帯構成の将来変化(子どもの成長や在宅時間の変化)も加味し、仕様書の最小作動水圧・最低着火流量・同時給湯能力の条件と、現地の水圧・流量テスト結果を突き合わせて行うのが現実的です。
メーカー別PS対応と型番の見方
主要メーカー(例:リンナイ、ノーリツ、パロマ等)はPS設置向けに、排気方向(前方・後方・側方・上方)、機能(オート/フルオート、給湯専用/ふろ給湯器)、省エネ仕様(エコジョーズ)、低NOxといったバリエーションをラインナップしています。型式の英数字や末尾記号で排気方向や設置形態を識別できるケースが多く、同一号数でも「屋外壁掛」と「PS専用」で筐体寸法や付属金具、アダプター互換が異なるため、見た目の近さだけで選ぶのは危険です。更新時はまず既設機の銘板写真(型式・ガス種・製造年)と、PS内の排気部材・ダクト径・扉形状(ルーバー位置、額縁寸法、ヒンジ側クリアランス)を記録します。次に各社の後継機一覧や置換表で互換を確認し、必要に応じて排気アダプターの型番も同時に特定します。ふろ給湯器では「自動保温」「追い焚き配管洗浄」「自動湯はり停止」などの制御仕様が世代で異なり、既設リモコンとの互換がない場合はリモコンセットの同時交換が前提になります。PS扉内は奥行の余裕が少なく、コーナーRや扉裏のリブでカバー開閉が干渉することもあるため、据付寸法図で「前面サービススペース」の要求値を必ず確認します。さらに、同軸FF化を検討する場合は同軸端末・アダプター・差圧損失の条件がシリーズごとに異なるため、据付説明書のダクト相当長表を用いて計算し、曲がり数・水平部の勾配・結露排水の取り方まで整理してから発注すると、工事当日のやり直しリスクを抑えられます。
型式記号の意味はシリーズごとに差があるため必ず最新の据付説明書とカタログで確認し不明点はメーカー窓口に照会します。
交換工事の流れと必要部材
交換の標準フローは、①現地調査(PS有効寸法、扉開口、排気方向、ダクト径と相当長、ガス種・メーター容量、給水圧・配管径、電源、ドレン経路、搬入経路)→②機種選定と見積り(本体、排気アダプター、ダクト・エルボ、PS取付金具、配管材料、リモコンセット、ドレン部材、扉加工費、廃材処分・養生)→③管理組合等への工事申請(作業日時、騒音配慮、養生計画、共用部の立会い要否)→④資材手配(納期確認、代替案の用意)→⑤既設撤去(ガス・水・電源遮断、残湯処理、周辺養生)→⑥新設据付(水平出し、PS金具固定、前面サービスクリアランスの再確認)→⑦排気接続(アダプター・ダクトの気密、支持金物のピッチ、貫通部防火処理、端末離隔)→⑧配管接続(ガスフレキ・パッキン管理、漏えい試験、給水・給湯・追い焚き配管、ドレン勾配)→⑨電装・リモコン接続(極性・接地、浴室優先の動作確認)→⑩試運転(着火性、流量・湯温安定、CO/CO₂比、ドラフト、各部漏れ、騒音、振動)→⑪清掃・引渡し(取扱説明、緊急連絡、保証書・試験記録の保管)という順です。必要部材は、機種本体のほか、PS取付金具セット、排気アダプター(前・後・側・上方/同軸)、ダクト・エルボ・クランプ、気密ガスケット、耐熱シール材、防火区画の貫通部材、配管材(フレキ/銅管/耐熱樹脂管)、止水栓・逆止弁、断熱材、エコジョーズ用ドレンホース・トラップ・受け、化粧カバー、電源コード・アース、専用リモコン等が典型です。PS扉内は作業性が限られるため、事前に既設のネジ種・サビ固着の有無、扉の取り外し可否、共用部の養生経路を確認し、必要なら仮設照明・集塵・低騒音工具を準備しておくと安全で段取りよく進みます。最終の品質は「気密・勾配・離隔・記録」で決まるため、写真と計測値を残し、将来のメンテにも活きる引継ぎ資料を整備するのが望ましい運用です。
エコジョーズのドレン排水と凍結対策
エコジョーズ(潜熱回収型)は、燃焼排気の熱を回収する過程で酸性寄りのドレン水が常時発生します。そのためPS設置では、①確実な排水経路、②逆流・臭気の遮断、③凍結・結露への対策、④周辺材への腐食配慮、の4点を中心に計画します。まず排水経路は、既設の排水立管や床ドレンに接続できるかを現地で確認し、接続不可の場合は受け皿+ドレンポンプ等の代替案を検討します。管径は機器指定の内径に合わせ、常時緩い下り勾配(目安1/100〜1/50)を確保し、たるみ・サイフォン状の屈曲を避けます。臭気や虫の侵入を防ぐためトラップ(封水)を適所に設置し、長期不在で封水が切れるケースを想定して、乾式トラップや封水維持剤といった選択肢も比較します。酸性ドレンは金属やモルタルを腐食させる恐れがあるため、配管材は耐食性のある樹脂系を用い、落水点の周囲は腐食・漏水に強い納まりとします。PS内は外気温の影響を受けやすく、冬季の凍結で排水が滞ると機器の保護停止や漏水リスクにつながります。断熱スリーブや保温帯、必要に応じて自己温調ヒーターを併用し、電源系統と併せて運用方法を説明します。結露対策としては、冷たいドレンが金属ダクトやPS扉に触れて水滴化しやすいため、断熱材の被覆と水滴の落とし先(受け)を明確にし、保守点検で清掃しやすいレイアウトにします。試運転では湯張り・高負荷運転中の排水量を観察し、接続部の滲み、封水の形成、勾配上の滞留がないかを写真と数値で記録しておくと、後日の不具合切り分けが容易になります。
費用相場と見積りの確認点
PS設置の交換費用は、概ね「本体価格+標準工事費+排気・ドレン等の付帯部材+申請・養生・処分等の諸経費」で構成されます。相場レンジは同等更新で18万〜35万円前後が一つの目安ですが、エコジョーズ化、FF化、長尺ダクトや扉加工、作業時間制限(休日・夜間)、搬入経路の難易度によって増減します。見積り精度を高めるには、①既設型式・ガス種・号数、②PSの有効寸法・扉開口・ルーバー面積、③排気方向・ダクト径・相当長、④ドレン経路の有無、⑤搬入・仮置きスペース、⑥管理組合の申請要件(作業時間・騒音・養生)、を事前に共有し、各社同条件での積算を依頼するのが近道です。見積書は「本体」「標準工事」「排気アダプター・ダクト」「ドレン関連」「扉加工・金物」「申請・立会い」「養生・清掃」「廃材処分」を分解し、必要時に単価根拠や型番を明記してもらいます。追加費用が発生しやすいのは、錆固着による撤去難、想定外のダクト相当長、ドレン接続先の新設、扉金物の干渉解消、ガスメーター容量不足・配管改修などです。これらは現調時の写真と採寸、据付説明書の条件照合で多くが事前予見できます。保証は「メーカー保証(通常1〜2年)」「施工保証(工事店の範囲と年数)」「延長保証(10年等の任意)」の三層で整理し、適用範囲(部品・出張・作業)、免責(消耗品・周辺機器)、連絡窓口を明確化。支払いは現金・振込・分割・リースの可否、納期遅延時の代替提案(同等機/仮設機)まで確認できると安心です。
相見積りは製品型式と排気方向部材リスト作業時間帯申請の要否まで同条件でそろえると比較しやすくなります。
法規・防火・排気安全の要点
PSは共用部であることが多く、工事は管理規約と使用細則、共用部工事申請の手順に従って進めます。技術面では、各メーカー据付説明書の「離隔距離」「ダクト径・相当長」「曲がり数上限」「端末処理」「気密・防火処理」を満たすことが第一要件です。防火区画を貫通するダクトや配管は、認定品の貫通部材で区画性能を維持し、シーリング材は耐火グレード・耐熱グレードの適合を確認します。FF同軸ダクトでは端末離隔(吸気口と障害物・歩行者動線・可燃物の距離)や滴下水の処理も重要です。ガス種は都市ガス13AとLPでノズル・設定が異なるため、発注・据付・試運転の各段階で型式とガス種を三重チェックします。安全確認では、ガス漏えい試験(石けん水・検知器)、配管接続のトルク管理、CO/CO₂比の測定、ドラフトの確認、燃焼音・振動・異臭の観察を行い、結果を記録・保管します。吸排気ルートの変更は逆流・滞留・結露のリスクを高めるため、原則として既設同等を踏襲し、やむを得ず変更する場合はメーカー基準内で計算・承認を経て実施工します。PS扉内は密閉性が高くなりがちで、FE方式ではルーバー面積不足による供給空気不足がCO上昇の一因となるため、面積・位置・風路直線性を重視します。工事記録(採寸図・写真・計測値・試験結果)は次回更新や点検時の一次情報として有用で、引渡し書類とともに管理組合・居住者が参照できる形で保管しておくと、トラブル時の切り分けや保険対応がスムーズです。
メンテと故障時の初期対処
PS設置の給湯器は屋外壁掛けよりも吸排気経路が複雑になりがちで、埃や油分の堆積、扉内の共鳴、ダクトの結露など環境由来の不具合が起きやすいとされています。予防の基本は「風路の確保」と「水分管理」です。具体的には、扉ルーバーとその裏側の埃清掃、ダクト端末や防虫網の目詰まり点検、ドレン経路の封水・勾配・滞留の確認、PS内の雑物排除といったルーチンを半年〜1年スパンで行うと効果的です。浴室リモコンのフィルター(循環金具)清掃や、給湯温度の季節調整、水圧の急変を避けるための開栓手順も、日常運用での安定に寄与します。運転音が急に大きくなった、着火が遅い、出湯が脈動する、共用廊下に熱気や臭いがこもる、といった症状は、風路や排気系に何らかの抵抗増大が生じたサインである可能性が指摘されています。初期対処としては、①電源の入れ直し(取扱説明書に沿う)、②給水・給湯・追い焚き系の止水栓の開度確認、③ガス栓の開閉状態の目視、④ルーバーや端末の目詰まり点検、⑤浴室循環金具の清掃、⑥リモコンに表示されるエラーコードの控え、を落ち着いて実施します。改善が見られない場合や、燃焼中に異臭・高温の排気・金属音など危険兆候がある場合は、運転を停止し、換気に配慮したうえで専門業者へ点検を依頼します。なおPSは共用部で鍵付き扉のことも多く、緊急時アクセス手順(保管場所、管理人連絡先、立会い要否)を平時に取り決めておくと対応が速やかです。年次点検の際には、CO濃度やドラフト、ダクト相当長の再確認、固定金具の緩み、配管接続部の滲み、電装端子の緩み、断熱材の劣化などを記録し、写真と計測値を残すと次回更新時の一次情報として有益です。凍結期にはドレンや屋外近傍の配管を重点的に見直し、凍結防止ヒーターの動作や保温材の破断をチェックします。これらの地道なメンテナンスが、燃焼の安定、寿命の延伸、事故予防につながると考えられています。
まとめ:給湯器のPS設置とはの要点
- PS設置は共用部の規約を守り安全と点検性を同時に満たすこと
- 扉内設置は美観に優れるため開口面積と風路確保が成否を左右する
- 標準設置は風路が直線で効率的だが共用廊下への配慮が欠かせない
- 排気方向は既設ダクトやルーバー位置に合わせて厳密に選定する
- FE方式とFF方式は換気条件と密閉度で使い分けることが基本である
- PS寸法は幅高さ奥行と前面点検域を同時に確保することが重要
- 扉ヒンジ鍵金物の干渉は本体パネル開閉に影響するため要注意
- 号数は世帯人数と同時使用条件から余裕を持って選定する
- メーカー型式は排気方向や機能の記号を理解して誤発注を防ぐ
- 見積りは本体工事部材申請費を分解し追加費用の芽を摘み取る
- エコジョーズはドレン排水経路と凍結対策を事前に決めておく
- 防火区画の貫通部は規定の処理で施工し記録も確実に残しておく
- 排気取り回しの変更は逆流結露のリスクがあるため慎重に判断
- 定期清掃と年次点検で吸排気と燃焼状態を良好に保ちやすくなる
- 交換前に型式写真寸法を控えて後継適合と工期短縮を図る
よくある質問(FAQ)
PS設置とは何ですか?ベランダ設置との違いはありますか?
PS設置は共用部のパイプスペース内に給湯器を収める方式です。ベランダ設置(屋外壁掛け)は専有部の外壁に直接取り付けるため、排気や点検スペース、工事申請の要件が異なります。
扉内設置と標準設置、どちらが良いですか?
扉内は美観・防雨に優れますが、ルーバー開口や風路条件を満たす必要があります。標準設置は風路が直線で安定しやすい一方、共用廊下への熱風・臭気配慮が必要です。既設条件の踏襲が基本です。
排気方向(前・後・側・上方)は変更できますか?
原則は既設同等です。変更する場合はダクト径・相当長・曲がり数・端末離隔・防火処理などを満たす詳細検証が必要で、条件を外れると逆流や結露、騒音の原因になります。
FE方式とFF方式のどちらを選べば良いですか?
PS内で給気するFEは、扉ルーバー面積や換気量が十分な場合に有効。密閉度が高い扉内や風の影響が大きい環境では屋外給気のFFが有利です。既設方式の踏襲と現地条件で判断します。
号数はどう選びますか?
目安は16号(1〜2人)、20号(2〜3人)、24号(3〜4人)。同時使用や浴室乾燥機の有無、冬期の給水温低下も考慮し、余裕を持って選定します。
エコジョーズにすると追加で何が必要ですか?
ドレン排水経路の確保(勾配・封水・凍結対策)が必要です。既設に接続先がない場合、追加部材や工事が発生します。
交換にかかる時間の目安は?在宅は必要ですか?
同等交換で半日程度が目安ですが、ダクト延長や扉加工などがあると1日以上になることも。室内側リモコン交換や試運転説明があるため、基本的に在宅が必要です。
費用相場はどのくらいですか?
同等交換で概ね18万〜35万円(税別)が一つの目安です。本体・標準工事・排気アダプター・ドレン・扉加工・申請等で上下します。
管理組合への申請は必要ですか?
PSは共用部扱いのため、工事申請や作業時間帯の制限、養生計画の提出が求められる場合があります。管理規約を事前に確認します。
既設リモコンは流用できますか?
世代やメーカーが変わると互換性がないことが多く、誤動作防止のためリモコンセットは同時交換が基本です。
エラーコードが出たときの初期対応は?
電源入れ直し、ガス栓・止水栓の開度確認、ルーバーや端末の目詰まり点検、循環金具の清掃を行い、改善しなければエラー番号を控えて専門業者に連絡します。
騒音や匂いが気になります。対策はありますか?
扉内の共鳴や排気の滞留が原因の場合があります。ルーバー清掃、ダクト支持の見直し、端末の離隔確保などで改善可能です。施工条件の再確認が有効です。
在庫がない場合の代替案は?
同等後継機への置換、排気アダプター変更による互換確保、仮設機の手配などが選択肢です。納期は季節や需要で変動します。
いつ交換を検討すべきですか?
目安は使用10年前後、不着火・湯温不安定・異音・漏れなどの兆候が出た時点。計画的更新で突発停止のリスクを抑えられます。
扉の加工は可能ですか?
管理規約と防火性能への影響を確認のうえ、メーカー推奨の開口条件を満たす範囲で実施します。無断加工は避けます。